よくある質問

Q

認知症になると、どんな症状が生じるのですか?

A

認知症の中心となる症状には、記憶が失われていく(記憶の障害)、時間や場所がわからなくなる(見当識の障害)、判断力や理解力が低下する、目的もなく歩きまわる(徘徊(はいかい))、現実に起きていないことを信じる(妄想)、意識がはっきりせず、興奮して物を投げたり騒いだりする(せん妄)、意欲が低下したりイライラしやすくなる、といったものがあります。

Q

認知症の相談窓口を教えてください。

A

お住まいの地域の「高齢者福祉関係の窓口」、「保健所や保健センター」、「地域包括支援センター」などに、お問い合わせください。

Q

物忘れがあると、認知症なのですか?

A

お年をとり、多くの人が経験する物忘れ(老化による物忘れ)と、「認知症の物忘れ」は違います。たとえば、「老化による物忘れ」は、物をどこに置いたのかは忘れてしまっても、物を置いたこと自体は覚えています。それに対して、「認知症の物忘れ」は、物を置いたこと自体を忘れてしまいます。「老化による物忘れ」に比べて、「認知症の物忘れ」では、日常生活に支障が生じてきます。認知症になっても、若いときの出来事や、仕事の内容などは覚えています。しかし、数日前のことが思い出せなかったり、認知症が進行してくると、数分前にあったことも忘れるようになっていきます。

Q

認知症になると、薬を飲まないといけないのですか?

A

認知症には、記憶障害の進行を遅らせる薬、血液の流れをよくしたり、脳の機能を積極的に働かせる薬、妄想・徘徊(はいかい)・興奮などに効く薬、不安や睡眠障害に効く薬など、いくつか種類があります。認知症にともなって生じる症状(周辺症状)に対して、漢方薬が用いられることもあります。認知症の早期の段階から服用すると、効果が高いといわれています。薬には、飲み薬(錠剤、細粒)や貼り薬などがあります。認知症では、薬をずっと飲み続けなければならない場合が多くなりますが、薬を飲むかどうかにつきましては、専門の医師にご相談ください。

Q

認知症の治療は、どのようにするのですか?

A

認知症の治療は、薬を飲むことです。さらに、脳に刺激を与え、脳を働かせることもします。音読や計算をする、音楽をする、芸術をする(絵画、ダンス、演劇、陶芸など)、運動をする、昔の楽しかったことを思い出す(回想)、などがあります。強制されたり、がんばりすぎたりせずに、リラックスした雰囲気の中で、おしゃべりをしながら、楽しんで行います。医師、看護師、精神保健福祉士、臨床心理士などの専門職の人たちが指導してくれると、効果が上がるでしょう。

Q

認知症を予防する方法はありますか?

A

アルツハイマー病の場合、今のところ100%予防できる方法は見つかっていません。しかし、「生活習慣病を治療する」、「運動を続ける」、「脳を働かせる」、「食生活を見直す」などを心がけることが、アルツハイマー病にならないための予防であることがわかってきています。脳血管性認知症では、原因となる脳梗塞や脳出血が起こらないようにすることが、いちばんの予防法です。

「生活習慣病を治療する」では、高血圧症、高脂血症、糖尿病が関係しているため、生活習慣を見直し、血圧を下げる、コレステロールや中性脂肪を減らすなどの治療を続けてください。
「運動を続ける」では、運動は脳によい影響を与え、アルツハイマー病の予防に効果があると言われるようになってきています。ウオーキング、ジョギング、サイクリング、水泳など、無理なく継続できる運動をすることで、脳の血流がよくなり、脳が活性化されます。
「脳を働かせる」では、同じ作業のくり返しではなく工夫をしたり、一人ではなくご家族や仲間と一緒に行ったりするとよいでしょう。歌や楽器の演奏、俳句や短歌、囲碁や将棋、絵を描く、草花に触れる、などをしておられるお年寄りもたくさんいます。
「食生活を見直す」では、よく知られていますように、いろいろな食材を、腹八分目に、塩分や脂肪を控えて、野菜を多めにとる、といったことが、生活習慣病の予防になり、これが認知症の予防にもつながります。

Q

認知症の人へは、どのように接すればいいのですか?

A

認知症であっても、精神的に落ち着いて、その人らしい生活を送ることができるようなケアが必要です。食事、睡眠、着衣、排せつ、服薬の管理、健康状態のチェックなどを中心に、安全・安心・快適な生活環境を提供します。
認知症の人に関わる姿勢としては、「(認知症の人が)自分はこうしたい」という環境を作り、ゆっくりと話を聞いてあげ、認知症の人の思いを受けとめなければなりません。そのためには、認知症になると、どのような症状が起こってくるのかを、介護する側が知っておく必要があります。
ご家族の心理としては、戸惑う、混乱する、腹が立つ、拒絶する、あきらめるなど、さまざまな思いが生じ、認知症を受け入れることにためらいが生じることもあります。ご家族自身の心身の健康維持が難しくなるかもしれません。特に在宅介護をされている場合は、適度に息抜きをする、心身をリフレッシュする、人の手を借りる、介護サービスを利用するといったことが重要になってくるでしょう。

Q

認知症の介護に関する相談窓口や、公的支援制度はありますか?

A

行政機関や病院などに、相談窓口が設けられています。各市区町村の役所や役場の「高齢者福祉関係の課」、地域住民の保健・福祉・医療のために必要な援助を包括的に行う「地域包括支援センター」、ソーシャルワーカーのいる病院などに、相談窓口があります。
公的支援制度につきましては、介護保険、精神障害者保健福祉手帳、自立支援医療、特別障害者手当、障害年金などの制度がありますので、上記の窓口でご相談ください。

Q

若い人でも、認知症になるのですか?

A

65歳以下で認知症が発症することを、「若年性認知症」と言います。全国で、約4万人いるとされています。若年性認知症は、働き盛りに発症することが多く、職を失えば、経済的に厳しい状況になります。老年期の認知症の人を対象とする施設が多いのが現状であることから、若年性認知症では、ご家庭での介護を余儀なくされ、介護者の負担が大きくなりがちです。現在、若年性認知症をめぐる状況は少しずつよくなってきていますが、地域の相談機関などを通して、情報を集めることが必要です。

Q

認知症になると、自動車運転はできないのですか?

A

認知症を発症後も、自動車運転を継続し、特に、初期認知症の患者さんの場合、運転の危険性が高いにもかかわらず運転中断にいたることは少なく、ご家族が対応に苦慮している実態が明らかとなっています。
現在は、自動車に依存した生活を送っている方が多いのが実情です。しかし、初期の認知症であっても、安全な運転ができない患者さんもいることから、まずは、患者さんの安全を優先することが大事になります。
自動車運転に関してご家族での話し合いが必要となりますが、早めに医療機関を受診し、正確な診断を受け、医師と相談しましょう。病気が運転にどのように影響するのかについて、ご本人に対する正確な診断、ご家族などの介護者から得られた情報が重要になってくるからです。
また、警察署や免許センターの運転適性相談窓口、市区町村の高齢者福祉関係の窓口などに、ご相談をすることもできます。

Q

子どもを産んでから妻の気分の落ち込みが続いているような気がします。初めて母になり、うれしいときなのにうつ病になることもありますか?

A

女性が子どもを産んだ直後に「うつ状態」になることはよくあります。気分が不安定になり涙もろくなったりする軽い「うつ状態」で、一般的にマタニティーブルーといわれています。これは、出産によってホルモンの分泌が乱れることが主な原因ですが、このほかに出産後の生活環境の変化や、子育てに対する不安などの精神的な要因も関係しています。
このような「うつ状態」は、出産を経験した女性の10~30%(欧米ではもっと頻度が高いといわれています)に見られますが、普通は一過性で1~2週間で自然に消失して治まります。しかし中には、出産後の「うつ状態」が続いてうつ病を発症してしまうケースもあり、注意が必要です。この場合はそのままにしておくと悪化する可能性もありますので、きちんと治療を受けることが大切です。ところが周囲の人は赤ちゃんが生まれた喜びに夢中で、お母さんのこのような精神的な変化に気がつかないことがあります。
一つの命を生むということは大変なことで、女性のからだやこころには大きな負担がかかります。出産後はなるべくこころもからだもゆっくり休めるような環境を作ってあげるようにしてください。そして、出産後の気分的な落ち込みが続いている場合は、医師に相談してください。

Q

うつ病で病院へ行って、いろいろ検査があるのはなぜですか?

A

病院で検査をするのは、うつ病の原因を調べたり、ほかに内科的なからだの病気がないかを確認するためです。
うつ病は、元々の素質に加えて職場での人間関係や生活上の変化などのストレスが発病状況因となって発症するといわれていますが、からだの病気や異常が原因となって「うつ状態」が現れることもあります。例えば、女性の場合だと出産後や閉経後などの女性ホルモンが大きく乱れるときに、このホルモンの乱れが脳に影響を与えて、気分的な変化が生じることもあります。また、脳出血や脳梗塞などの病気では脳の血流や代謝が障害されるために、脳の中の気分や感情に関わる部分が影響を受けて、抑うつ状態が現れることもあります。そのため、患者さんの「うつ状態」がうつ病によるものなのか、何かほかの原因によるものかを調べるために検査をおこないます。
病院でいろいろと検査を受けると、「自分は重症ではないだろうか」と不安に思う人もいますが、これは原因を調べるための一般的なものなので心配はいりません。

Q

最近、夜なかなか眠れません、これもうつ病でしょうか?

A

基本的に眠れないというのは、一般に「不眠症」といわれています。この不眠症には単に眠れない以外に、途中で目が覚めてしまう、朝早く目が覚めてしまうなども含まれます。そしてこのような状態が1カ月以上も続いており、「眠れない」ことが気になっている状態をいいます。
この不眠症の原因には、からだの病気や異常、生活環境の問題などいろいろありますが、うつ病との関係は極めて密接といわれています。実際、うつ病で病院を受診される患者さんのほとんどが「眠れない」という症状を訴えています。とくにうつ病では、途中で目が覚めてしまう、早く目が覚めてしまう、といった熟眠障害のタイプが特徴的であるといわれています。
いずれにしても、「眠れない」ということは、精神的な病気のサインである場合もありますので、医師に相談してみてください。

Q

うつ状態になったのは、夫の両親と同居をするようになってからの気がします。今度、夫の転勤でまた家族だけの生活に戻ることになりました。これで、もう治療を受けなくても大丈夫でしょうか?

A

うつ病はある一つの原因ではなく、いくつかの原因や状況が重なりあって発症するといわれています。なかでもうつ病は脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの減少が原因であると考えられています。そしてこれに、同居や引越し、転職、仕事の激務といった生活環境上の変化やストレスが加わってうつ病が発症するといわれています。そのため、この「同居」というのは、うつ病を発症する「誘因」ではありますが、原因そのものではないため同居を解消したからといってうつ病が治ったと判断することはできません。そして、このようにうつ病が発症する人の場合、「同居」という一つのストレス要因を取り除いても、また別のストレスがきっかけでうつ病の症状が現れることもあります。そのため、うつ病の患者さんでは、うつ病に対する抵抗力を高める必要があり、くすりによる治療はこの抵抗力をつける一つの有効な方法です。
ですから、原因が解決できたとしても、それはうつ病がよくなったわけではないため、医師の指示のある間は治療を続けてください。

Q

同僚がうつ病で落ち込んでいるので、励まそうとみんなで明るく盛り上げているのですが、かえって逆効果の気がします…

A

よくある誤解ですが、患者さんを元気づけようと周囲の人が努めて明るくします。しかし、うつ病の患者さんは一緒に明るくしたくてもできないため、周りとのギャップにどんどん気持が落ち込んでいき、症状が悪化してしまいます。基本的に、うつ病の患者さんに対しては、静かに休めるような環境を作ってあげ、今までと同じように普通に接してあげることが一番です。
そしてもう一つ、会社の中で上司や部下、同僚にうつ病の人がいる方に注意してほしいことは、むやみに仕事のあと、お酒に誘わないことです。「お酒でも飲んで、気分をパッと晴らそう」と飲みに誘うことがあるようですが、これまでお酒が好きだった人でも、うつ病のときはお酒がおいしくなく、飲みにも行きたくないものです。そればかりか、これまでおいしかったお酒がおいしくないことや、一緒に楽しめない自分によけいにいら立ちや不安を感じてしまいます。お酒には、うつ病を改善させる効果もありません。うつ病の人には、このようなことは避けるようにしましょう。

Q

抗うつ薬をのんで性格が変わることはありますか?

A

抗うつ薬が脳やこころといった目に見えない部分に作用することに何となく違和感を感じる人がいるかもしれません。しかし、抗うつ薬は、脳内神経伝達物質のバランスの乱れを調整してうつ病を治すくすりです。それ以外の作用はほとんどないため、抗うつ薬をのんで性格が変わるということはありません。

Q

くすりをのみ続けると中毒になったりしますか?

A

これは、よくある質問で抗うつ薬をのむ患者さんの多くが、くすりをのみ続けていると習慣になって、一生くすりをのみ続けなければいけない体になってしまうのではないかと心配しています。しかし、抗うつ薬は習慣性や依存性はありませんので、医師の指示通どおりに安心してくすりを服用してください。

Q

くすりはどのくらいの期間のみ続けますか?

A

医師の指示がある間はずっと服用を続けてください。うつ病の症状が悪いときはほとんどの患者さんが指示どおりにくすりを服用してくれるのですが、少し症状が良くなってくるとくすりの服用がわずらわしくなって、勝手にやめてしまうことがあります。こうしたことは再発、再燃あるいはうつ病の慢性化を招きます。医師の指示に従って服用してください。

Q

私の父は65歳ですが、くすりをのんで認知症になることはありますか?

A

「抗うつ薬をのみ続けると認知症になる」という話があり、このようなうわさを信じている患者さんのご家族から、心配して質問されることがあります。しかし、この話には全く根拠はありません。このようなうわさを信じて、くすりの服用をやめ、症状が改善せずに悪化してしまうことの方が問題です。
また、一つ加えておくと、老化による認知症の症状にうつ病と似た症状が現れることがありますが、認知症は加齢による脳の血管障害や脳の萎縮が原因で起こるため、うつ病とは治療法が異なります。そのため、病院でのきちんとした鑑別が重要になります。

Q

うつ病に一度なると何回も繰り返すと聞きますが、本当ですか?

A

再発・再燃にはいくつかの原因があります。病院で処方されているくすりを症状がよくなってきたからといって、自分の判断でやめてしまったり、十分な期間くすりを服用しなかった場合に多くみられるようです。また、くすりによる治療と平行して自分のコントロール術を身につけることも大切です。

Q

今日うつ病と病院で診断されたのですが、家族にどのように話せばよいでしょうか?

A

うつ病は決して特別 な病気ではなく、気持ちの持ちようやこころの病気でもありません。治療を受ければ必ず治る「病気」だということを家族に話してください。 また、うつ病の治療を進めていく上で、家族の理解と協力は重要になります。病気のときはなかなか自分を客観的にみられなかったり、判断力が鈍ったりするため、症状を医師に的確に伝えられません。そのため、家族に受診に同席してもらうことをお勧めします。家族のかたも一緒に医師の説明を受けることによって、病気への理解が深まり、治療の進行がスムーズになると思います。

Q

更年期障害もうつ病ですか?

A

更年期障害とうつ病は基本的には異なる病気です。更年期障害とは、閉経前後の女性に起こりやすい自律神経失調症状の俗称です。加齢に伴う卵巣機能の低下によって、女性ホルモンの分泌量が減少し、身体にさまざまな症状が出てきます。こころの変調として、憂うつ気分や気分の落ち込みが出てくることもあります。更年期障害を女性ホルモン補充療法などで治療しても抑うつ気分が治らない場合は、抗うつ薬による治療を行うこともあります。

Q

抗うつ薬と市販の風邪薬を一緒にのんでも大丈夫ですか?

A

市販の風邪薬などを一緒にのむとからだによくないこともあるので医師または薬剤師に相談してください。

Q

うつ病の治療には家族のサポートが重要であるといいますが、家族の人間関係がうつ病の原因となっている場合、どのようにしたらよいでしょうか?

A

うつ病は何か一つの要因のみによって発症するわけではなく、もともとその人が持っている素質や感受性、感覚、置かれている生活環境など、いくつかの要素が積み重なってうつ病が発症します。家族との人間関係に原因があるかもしれないという場合、環境調整をすることは大切です。しかし、それとともに適切な治療を受けなければうつ病は改善されません。
うつ病を改善するために何より大切なのは、適切な治療と休養です。治療は病院に行けば受けられますが、こころやからだをゆっくり休めるためには周囲のサポートが欠かせません。そのため、家族の問題についてどのように対処していけばよいか主治医に相談しながら、協力を求められる身内の方や友人、会社の同僚などにうつ病のことをきちんと話し、休養がとれる環境をつくるようにしましょう。しかし、どうしても自分では環境がつくれないという場合は、入院を考えてみてはいかがでしょうか。うつ病の患者さんはまじめで責任感の強い人が多いため、「あれを自分がやらなければならない!」という義務感からなかなか開放されず、何もしないでゆっくりとただ休むということができません。そのため、入院のように全てお任せできる環境の方がゆっくりと休み、治療に専念できるかもしれません。
最近は、ストレスから解放される環境で心身ともにゆっくり休養できる場を提供することを目的とした「ストレスケア病棟」がある病院も少しずつ増えてきています。

Q

うつ病では薬だけの治療では十分ではなく、休養が大切というのは本当ですか?

A

うつ病では、早期に適切な治療を行えば一般的に、6カ月から1年ほどで回復してくるといわれています。ただ、ここで大切なことは、“適切な治療”ということです。いくら抗うつ薬による治療を続けていても、これまでと変わらないくらいハードに仕事や家事をしている状況では、おくすりの効果は十分にあらわれません。逆に休職したり、家事を家族に手伝ってもらうなどして休養できる環境を作っても、おくすりを医師の指示どおりに服用していなければ思うように症状は改善されません。質の良い休養をとるためにも、きちんとおくすりを服用することは大切なのです。

このようにうつ病の治療は、休養、おくすりによる治療、周囲の理解とサポートと、いろいろな要素がうまくかみあうことで、より高い効果が期待できるようになります。

Q

うつ病の“遷延化”というのはどういう意味ですか? また、なぜそうなるのですか?

A

うつ病の遷延化とは、うつ症状が十分に改善せず、長引くことを意味します。うつ病は治療により半年から1年以内に十分な改善が見られるようになります。しかし、治療を行っても症状が改善せず、遷延化してしまうことがあります。
遷延化してしまう原因の一つとしては、くすりをのむ量や期間が不十分であることが挙げられます。そして、この多くのケースで医師に相談せぬまま患者さんの判断で勝手にくすりの量を減らしていたり、服用自体を止めてしまっているのです。少し症状がよくなったからといって安易にくすりを止めることは、うつ病を長引かせたり、再発を繰り返す、つまりはうつ病の遷延化につながってしまうのです。せっかく早期に治療を開始しても、遷延化してしまうとなかなか治り難くなります。
また、治療をはじめるのが遅かった場合も、遷延化につながる可能性がありますので、うつ病かな…?と思ったら、早めに精神科の専門医に相談することが大切です。

Q

うつ病で入院が必要なケースもありますか?

A

一般にうつ病が重症になった場合は入院が必要とされています。その中でもまず、自殺の危険性がある患者さんには強く入院が勧められます。うつ病の症状の辛さに耐えきれずに「死にたい」、「このまま消えてしまいたい」などと直接的な自殺をほのめかすような発言があり、さらに「じっとしていられない」という焦燥感がある場合は入院の対象となります。しかし、うつ病患者さんの多くが実際に自殺を言葉で予告することは少なく、他人に迷惑をかけないようになんとか自分ひとりで問題を処理しようとしてしまいます。そのため、うつ病のときは悩みを一人で抱え込まないようにして、家族や周囲の方は、患者さんの悩みを誠意を持って受け止めるといった姿勢が大切になります。
この他にも、自分の病気はもう絶対に治らないと思い込む心気妄想や、このままでは治療費が払えなくなるといった貧困妄想など妄想状態が現れた場合も入院を必要とします。妄想が認められるのは、高齢者のうつ病で多いと言われています。
また、今のまま生活を続けているとなかなかよくならず、症状が重くなる可能性がある人や、ひとり暮らしの人、「小さな子どもがいてとても休養できない」など自宅療養が難しい人も、生活環境を改善する意味で入院が勧められます。
うつ病で入院する場合には、本人が希望して入院する「任意入院」という形がとられることが多く、期間は2~3カ月程度が一般的です。この場合、本人が帰りたくなったらいつでも入院を止めることができます。

Q

薬ではなくカウンセリングでうつ病を治したいのですが…

A

カウンセリングでは、カウンセラーと患者さんが患者さんにとって重要である、経験、人間関係、出来事、気分、知覚などについて話し合います。これにより患者さんの抱える問題が整理され、症状が軽減されるということもあります。また、うつ病は患者さんのご家族にも影響を及ぼすため、ご家族と患者さんがいっしょにカウンセリングに参加して、ストレス対処法などを学びます。
一方、抗うつ薬には、うつ病に関連する脳内神経伝達物質のバランスの乱れを調整する働きがあります。薬による治療の最終目的は、症状をコントロールし、疾患を治療することです。つまり、うつ状態を改善し、患者さんを通常の生活リズムに戻すことです。
軽症のうつ病の場合、カウンセリングのみの治療を希望する患者さんもいます。しかし、これは患者さんが判断できるものではなく、精神科医または心療内科医が患者さん個々の状況に合わせて治療計画を判断します。通常はくすりで脳内神経伝達物質のバランスを整えてからカウンセリングをする方が、より効果的であるとされています。